金星
「お前、濡れてんじゃん、ほらタオル」
アズミを居間のソファーにとりあえず座らせて、
そこに、パサっとタオルをかぶせた。
「ありがと。急に降ってきちゃって」
「制服は? シャツも結構濡れてんじゃね? 着替えあるぞ」
白いシャツから黒らしき下着が少し透けていた。
「大丈夫、そんなに濡れてないよ」
「そろそろ期末テストだろーし、風邪引くとやばいべ?」
「大丈夫だって!」
ソファーに軽く腰掛けているアズミは、
俺の方を見ない。
「ごめんね、いきなり来ちゃって。迷惑だよね?」
いつもの上ずった声じゃない。
「ああ、本当にそうだよ。なぜか俺、お前に避けられてるみたいだしな」
俺はカウンターに肘をかけて、
アズミの後ろ姿に向かってそう言った。