金星
今日は、いつも通り二の腕へ、

ではなく、

俺の胸にしがみついてきた。


濡れた髪や制服から、甘い匂いがつんとする。


不意打ちだったからか、

珍しく俺の心臓が強く鳴った気がした。


でも……だめだ、こいつは。


寒いからかは分からないけど、

俺のシャツを掴むその手は震えていた。


「……こら、離れろよ。まあまあ、落ち着け」


アズミの肩を掴んで、俺から剥がそうとしたが。


「何で? アズミのこと抱けないの?

そんなにアズミって魅力ないの?」


「いやいや、お前に魅力がないとかじゃなくってな」


と、その華奢? いや、結構しっかり筋肉がついている、

肩をポンポンと撫でながら、

俺はアズミを落ち着かせようとした。


ん?

そういえば、

今まで、俺は色んな女と寝てきたのに、

何でこいつだけは抱けないと思うんだ?
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