金星
「潤ちゃんは知らないと思うけど、あたし潤ちゃんと同じ中学だったんだよ」
と、少し落ち着いた声でアズミは言った。
「……あ、そうなの?」
俺も少し我に返る。
「あたしバレー部で髪の毛ショートで、部活ばっかりしてて恋愛とか全然関係なくて」
「……」
「潤ちゃんのことずっと憧れてたんだけど、全然近づくこともできなくて」
俺にしがみついているアズミの体が、
嗚咽と鼻水をすするタイミングで少し揺れる。
「高校入ったら近づこうと思って、エクステつけてメイクも始めて、
潤ちゃんに釣り合う女の子になろうと頑張って……」
「うん」
「それで、西高と合コンするって友達に誘われて、
もしかして潤ちゃん来るのかなって期待して行ったら、本当に来ててもう夢みたいで」
「ああ」
気が付いたら、その話に相槌を打っていた。