金星

「あ、悪い……」


アズミに向かって俺は右手を差し伸べたが、


「潤ちゃん、本当にごめんね。今まで本当にごめんね!」


と叫んで、アズミは俺のそばから逃げるように、

ソファーに置いていた鞄を掴んで、玄関の方向へ走っていった。


待てよ。


行くな。


アズミ!


なぜだ、声が出ない。


「バイバイ潤ちゃん!」


勢いよく、玄関の扉が閉められた。


あれ、何で俺、

泣いてるんだ?


俺の目からは、ゆっくりと冷たい涙がこぼれていた。

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