金星
「まあ、お前も女泣かしてばっかじゃなくて、そろそろまともな恋愛しろよ」
カウンター越しに、
ネクタイを緩めながら親父は俺に言った。
「お前に言われたくねーよ」
「何だよ、お父さんに向かってお前とは……お、あったあった」
冷蔵庫の横にあるワインセラーから、
一本ボトルを取りだしたようだ。
「潤一たまには飲むか。今日急に人と会う約束が無くなったんだよ」
「約束一つ無くなったくらいで、上場企業の社長さんが予定ぽっかり開くほど暇じゃねーだろ」
「上場っつってもまだ端くれだぞ。まま、今日は久々にこれ飲みたくなったんだよ」
ガラステーブルの上にワインボトルと、ワイングラスを2つ置いて、
親父はソファーの端に座った。