金星

「潤一はちゃんと恋愛してるのか?」


「してねーよ。ってか親父に心配されたくねーし。愛人何人囲ってんだよ」


「父さん、モテるから仕方ねーんだよ」


堀の深い顔立ち、巧みな話術、センスのあるスーツ姿、そして社長という肩書。

そりゃ、50間近にしても、女がどんどん寄ってくるわ。


「お前はな、愛人とか遊びじゃなくてちゃんとした女を作れよ」


「は? その言葉、そっくり返してやるよ」


「父さんだって、本気で女に惚れたことくらいあるぞ。一度だけだが」


「マジかよ!」


半ば信じられなくて親父を見たが、

その目は何故か真剣になっていた。


「お前の、母さんにだよ」


「……」


声が、出なかった。
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