金星
「お前が女を泣かせてばっかだから、いつかは言わなきゃならないと思ってたんだよ」


「か、母さんって……」


俺、親父の愛人何号かから生まれてきたんじゃなかったのか。


「あ? 母さん? 普通に生きてるよ、お前が3歳の頃に離婚したけどな。

お前は生粋のお母さんっ子だったんだぞ」


「は?」


「俺が今まで本気で愛した女はお前の母さんだけだ」


大きすぎる画面のテレビの音だけが、居間に鳴り響いている。


プルルル、プルルル。


その空間を親父の携帯の音がかき消した。


「あぁ、俺だ」


親父が携帯を持ってカウンターの方へ向かう。



母さん。


母さん……。



その間に心の中で、その言葉を繰り返してみた。
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