金星
「ううん、いないよ。去年いたけど別れちゃって今は一人。優奈は?」


「あたしも、今はフリーだよ!!」

そう言って、朋宏の方を向いた。


「そっか……」


朋宏はベンチに座りながら、自分の足元を見ていた。


遠くからカラスの鳴き声が聞こえてくる。


「今日さ、久々に地元帰ってきて、優奈いないかなって、ふと思ってた」


「え……」


「ね、また会わない?」


少し前かがみの姿勢から、朋宏はあたしをちらっと見た。

人柄が出ているような、穏やかな表情。


顔立ちも整っていて、大人っぽい格好よさを持っている。


「うん! 会いたい!」


その日はそう言って別れた。

ドキドキして眠れなかった。
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