金星

「あれ~? 今日も優奈ちゃん来てないの~?」


いつも通りのヘアバンドをつけなおしながら、

タケルが俺に言った。


「あー、男できてホッとして夏風邪でも引いたってとこだろ」


どーせ男のとこに連泊してるだけだと思ったが、

何となくタケルの手前、言わないでおいた。


「話変わるけど、タケルって小さい頃の記憶って何歳くらいまである?」


「何何? 突然~。うーん、2~3歳の記憶なら何となくってとこかなぁ」


「どんなの覚えてる?」


「俺4歳のころに北海道のじーちゃん家からこっち越してきたんだけど、それより前の記憶ってとこかな~。雪で遊んだり、じーちゃんの旅館走り回ったりとか」


「ふーん、そっか」


タケルが何々いきなり~、とか言ってる間に、

授業が始まるチャイムが鳴った。

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