金星
「ねー、潤一ぃ~何してんの?」


部屋の中にキャスター特有のバニラの臭いが充満していく。


「あ? 何でもねーよ」


「ずっとパソコンばっかり見てー。なにそれ、チャット?」


その長い髪の毛が俺の肩にかかった。


「見んじゃねーよ」


俺は勢いよくノートパソコンを閉じた。


「何なん? パソコンばっかりみてー。アキバ系かよ?」


「だから部屋ん中でタバコ吸うなっつってっぺ? ……外で吸えよ」


間接照明だけが部屋を灯し、

キャミソール姿の沙耶子がビールの空缶にタバコを入れている様子が

ぼんやりと俺の瞳に映った。

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