金星
そして、とうとう終業式。

やっぱり優奈は来なかった。


優奈の3つ前の席――タケルの席も空っぽだ。


外からは蝉の鳴き声が聞こえてくる。


『絶対、優奈ちゃん、彼氏から暴力ふるわれてるから、潤一ちゃんと守ってあげて』


タケルが最後に俺に言った言葉。


ちゃんとこの約束は守ろうと思ったけど、

優奈は学校に来ないし、どーすればいいか分からなかった。


「潤一くん」


終業式が終わって、一人で教室に戻ると、

少し茶色がかった髪色の、落ち着いた雰囲気の女子生徒が俺の席の前に立っていた。

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