金星
「どうしたのさー加奈?」

「彼氏とどう?」


温かいココアのカップを両手で包み込みながら、加奈は言った。


「え? 普通だよ~! 今までの彼氏の中で一番ラブラブかもしれない」


「そうならいいんだけど……」


その時優奈の携帯が勢いよく震えた。


「あ、ごめんっ」


その携帯を持って、優奈は走って店の外に出た。

おそらく彼氏からの電話だろう。


「……」


加奈はココアのカップを両手で持ったまま、下を向いていた。

俺もホットコーヒーを一口ずつすする。


「あたし優奈に何て言ったらいいのかな」


加奈は下を見ながらそう呟いた。


「別れさせたいならそう言えばいいし、別れないって言うんだったらまた様子見にくればいいんじゃね?」


「でも、あんなに幸せそうな優奈の顔見てたら何にも言えないよ。優奈昔っから恋するとまわり見えなくなるから」


その時、

「こんにちは。優奈の友達?」

と爽やかな好青年が俺たちに話しかけてきた。
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