金星
「そうなんだ。じゃあ俺そろそろバイト戻るね」
そう言って俺たちに笑顔を向けた後、朋宏は去っていった。
いつの間にか、店内は客であふれ返っていて、
席が空くのを待っているグループも数組いた。
「いきなりごめんっ! ちょっと朋宏ああ見えてヤキモチ焼きだから~」
テーブルの上の3つの空のカップをごみ箱に持っていきながら、
優奈はそう言った。
「そ、そっか」
と言って、ちらっと俺を見てから、加奈は優奈を心配そうに見つめた。
「一応、朋宏に誤解させないようにね。潤一顔はイケメンだし」
「ふーん、お前って彼氏からあんまり信用されてないんだな」
俺がそう言うと、
優奈は一瞬表情が固まった気がしたが、
「違うよー! 朋宏は束縛ちょっときついだけ。でも愛されてるって感じするからいーの!」
と言って、先にスタスタと店から出て行った。
愛されてる、か――。