金星

驚いている優奈を尻目に、俺は加奈の部屋に入った。

薄いピンクの家具が目立つ、女の子らしい部屋。


「え? 何で潤一が」


「おー、久しぶり」


その中にいた、優奈は、

目の周りに青いアザ、唇から赤い血をはみ出させ、

普段の明るい表情とは違っていたが。


「あはは、潤一にまた変な姿見られちゃったなぁ」


そう言って、優奈は悲しげに笑った。


「また、って?」


俺はベッドそのそばで体育座りをしている優奈と、

同じ目線になるようにしゃがみ込んだ。


そういえば、優奈が元彼と付き合っていたとき、

屋上前でずぶ濡れの優奈に会ったことがあった。


あの時、優奈がいじめっぽいのに合っていたらしいことを、後でタケルから聞いた。

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