金星

しばらくして、その音は止んだ。

1階からは、加奈の家族が談笑する声が聞こえてくる。


加奈の部屋には、家族のいる居間を通らずに階段で行けるため、

おそらくここに怪我した状態の優奈がいることは知らないのだろう。


「どーする? 今日こいつここ泊めてく? 落ち着くまで俺もいるし」

「うん。それがいいよね。親戚の家あたし一人でいけるし、しばらくここに残るよ」


加奈の家族は明日から親戚の家に帰るらしい。

そういえば、もう墓参りのシーズンか。


すると、

「朋宏、こっち向かってきてる。どうしよう」

優奈が自分の携帯を見て、そう言った。


「メール入ってるの?」


「うん」


メールの内容は、

『さっきは本当にごめん、優奈。もうしないって言ったのに、本当にごめん。

優奈今実家にいるのかな? もうすぐ着くから。お願いだから帰ってきて』

だった。
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