金星
『朋宏へ
逃げてきちゃってごめんね。
あたし朋宏のこと好きだよ。このまま好きでいたいから、
落ち着くまで、しばらく別々に暮らそう。』
用件だけ伝えるメール、これなら問題ないだろう。
送信して、1分も立たないうちに、すぐに返信が来た。
『優奈、良かった! 今どこ? もしかして友達のとこ?
加奈ちゃんだっけ? 確か南町の方だよね。何となく住所覚えてるから今から向かうね』
「……え?」
加奈は目を見開いて、驚いていた。
再び部屋の中が静まり返った。
外からは何かの虫の鳴き声がかすかに聞こえてくる。
「あ、携帯、の電話帳……に、もしかして、加奈、住所も入れてる?」
加奈は緊張した顔でゆっくりと頷いた。
優奈が口を手で覆いながら続ける。
「朋宏、あたしの携帯毎日チェックしてるから、いつか電話帳も見てたのかも!」