金星

でも――


「あたし朋宏のこと、好きだよ。

だから、落ち着くまで少し距離をおこう?」


朋宏の体から離れながら、あたしはその目に向かって言った。


「何で? 優奈は俺と一緒にいたくないの?」


悲しんでいるような、泣きそうな目。


「一緒にいたくないわけじゃないけど、朋宏のこと好きだけど」


「じゃあ、一緒に帰ってくれるよね?」


「……」


「ね、優奈」


「ううん、しばらく別々で暮らそう。そしたら朋宏も無理なエネルギー使わなくて良いか……」


ここまで言って、あたしは恐怖で言葉が出なくなった。

朋宏の目が、変わってきた。


やばい……。
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