金星

「帰るぞ、お前にそんなこと言う権利ないんだよ」

「キャッ」


突然、朋宏は強い力で、あたしのロンTの胸元をねじるように掴んだ。

あたしは反射的に、ぎゅっと目を強く閉じた。


しかし、その瞬間、

あたしの胸元から、朋宏の手が離れた。


「はい、ストップ」


目をゆっくり開けると、

潤一が朋宏の腕をつかんでいた。


「は? 関係ない奴は黙ってろよ」


朋宏は静かにそう言って潤一の腕を振り払った。


「いやいや、女の子に手を上げるのはだめっすよ」


再び潤一が朋宏の腕を少しひねりながら押さえ込む。

すると、朋宏は潤一ではなく、あたしを睨みつけた。


「おい、優奈、やっぱりこいつとできてるんだろ?」
< 244 / 358 >

この作品をシェア

pagetop