金星
朋宏も我に返ったのか、まわりをふと見渡している。
「とりあえず、今日のところは優奈の怪我の手当てしとくんで、
帰ってもらえませんかね? 警察とか呼ばれるの嫌ですよね?」
潤一が、朋宏の腕を離しながら、そう言った。
「優奈……」
駐車場の緩い明かりに照らされた朋宏の顔は、
いつの間にか悲しさと苦しさで満ちていた。
「とも……ひろ、ごめん、今日は帰って……」
あたしは震える声でそう言うのが精一杯だった。