金星

「ふぅ、良かった。加奈ありがとう。

俺、人殴ったことないし、あの後どーすりゃいいか分かんなかったんだよ」


潤一がほっとした顔でそう言う。


「もう、何のん気なこと言ってるんすか……」


加奈も緊張が解けたせいか、潤一に冷静につっこんでいた。


駐車場がうるさいと誰かが通報していたら嫌だったので、

朋宏が去った後、急いで加奈の家の前に戻った。



「2人とも、本当にごめん。迷惑かけて本当にごめんね……でも、ありがとう」


あたしは2人に向かって泣きながら思ったことをそのまま伝えた。


朋宏のあんな姿を2人に見せてしまって、

あたしのあんな姿も見られてしまって、

何にもできなかったあたしを助けてくれて。


あたしの心の中は、恥ずかしさや悲しさや、

また助けてくれた感謝でぐっちゃぐちゃになっていた。

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