金星
「潤一はさぁ、お母さんいないんだっけ?」


「ああ、そうだよ」


「寂しくないの?」


「別に。物心ついたときから親父しかいなかったし」


つまみにピスタチオを出したとたん、

優奈のビールも進んでいった。


「そっか、潤一は強いね」


「そう? お前の方が強いと思うけど?」


「何で?」


「いっつも人を好きになって、本気でぶつかってってるじゃん。すげーよ」


「違うよ……」


そう言って、優奈はソファーに体育座りしながら、ビールの缶を握り締めていた。

なぜか泣きそうな顔になっている。
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