金星

「あ、ごめーん、起こしちゃった? ってかあんなとこで寝させちゃってごめんっ!」


ロンTに俺のジャージを履いたままの優奈が、

キッチンで、何やら料理っぽいことをしていた。


「大丈夫? 潤一、風邪ひいて……ひゃっ?」

と、言いかけた優奈に俺は近づき、

自分の右手をその頭にがっしりと置いた。


「お前はなぁ~」


俺は両手で、優奈の髪の毛をぐちゃぐちゃにした。


「ちょっとぉ、せっかくお礼に朝ごはんつくってあげてるのにぃ」


彼氏のとこに戻ったかと思って心配した、ともうまく言えず、

寝起きの瞬間、ビビったことに対して、

優奈に何て言ったら良いか分からなかった。


とりあえず、キッチンの外、カウンターの椅子に座って、

優奈の料理の様子を眺めてみることにした。
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