金星
「お前、料理とかできるんだ。意外」
「一応女の子ですからー、ってか潤一の家の冷蔵庫、微妙なのしかなくてさー」
「まあ、男の2人暮らしだしな。おお、卵焼き、旨そうじゃん」
優奈はフライパンを使って、焼かれた溶き卵をくるくると巻いていった。
「そうそう、朋宏が料理超うまくて、よく教えてもらっ……て……」
そう言った瞬間、優奈の手が止まった。
フライ返しが床に、こつん、と落ちる。
「とも……ひろ……」
優奈はそう呟いてどこか一点を見つめたまま、思いつめた顔をしていた。
テレビから、めざましテレビのニュースの音が聞こえてくる。
卵が焼けるつんとした甘い匂いが、少し香ばしくなってきた。
「……おい、焦げてきてるじゃん。俺超おなかへってるし、美味い飯食いたいんだけど」
「あ! 本当だ~やばいっ! ってか作ってもらってるのに何その発言ー!」
そう言って、優奈はフライ返しを拾い、
箸を上手く使って、卵焼きを完成させた。