金星
「あ? 別に気にしなくていーよ。それともどっか行く? せっかくの夏休みだし」


いい気分転換になればと思い、とりあえずそう言ってみたが、


「いいねー行きたい! あたし夏休みどこにも行ってないし!」


意外と優奈はノリノリだった。


28階の窓から見える景色は、快晴の空と、きらきらした建物の反射した光。

遠出するにはぴったりの日のように思えた。


「うーん、タケルのとことか行ってみる?」


「北海道だよね? タケルに会いたい! けど、飛行機だよね? あーお金が……パパとママ帰ってくれば借りられるけど」


「確かにふらっと行くにはちょっと遠すぎるな、また皆で行けばいっか」


「タケル……元気かなぁ」


そっか、こいつ彼氏に男のアドレス全消しされたって言ってたから、

タケルと連絡とれないのか。


「じゃあ、東北にでも行くか」

「は? 何で何で?」


自然と東北という言葉が口から出た。


「俺の生き別れの母さんがいるんだよ。お前も来る?」
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