金星
「俺? 中学の頃卓球部だよ」
「マジで!? に、似合わねぇ~」
「うるせーよ」
昨日の出来事が、まるで夢のよう。
この時間がもっと長く続けばいいと思ってしまうほどだった。
初めて聞いた名前の駅で、電車を降りる。
「おおぅ、いい感じの町だね。癒される~」
駅から出ると、ヨークベニマルくらいしか大きな建物がなかった。
「こっから歩いて15分くらいかな。お前ヒールだけど歩ける?」
「おっす! もちろん大丈夫だよー」
あたしの歩幅に合わせて、潤一はゆっくり歩いているようだ。
きっと、あたしに気を遣ってる訳ではなくて、自然にそうしてるみたい。
こいつがモテる理由が何となく分かる気がする。