金星
住宅街の隙間にある畑や田んぼ。
セミの鳴き声が響く中、まばらに車が通る道路を歩いていった。
「母さんに会ったところで、どーなるんだろ」
ふと潤一がそう呟いた。
「どーなる、じゃなくて、お母さんに会いたいからここに来たんでしょ?」
「そーなのかなぁ。よく分かんねー」
分かんないわけないじゃん、
素直になりゃいいのに、と思ったが、言わないでおいた。
すると。
「ここ、か?」
同じような形の家が並んでいる通り。
そこに近づいたと思った瞬間、潤一の足が止まった。