金星
「へ~、静かなところだね」
田んぼに囲まれて、まばらに住宅が広がっている。
その一角。
比較的新しい家が続いている。
「たぶんあれっぽい」
通りの手前から3軒目の家を潤一が指差した。
クリーム色の塀の奥、白に茶色い屋根の2階建ての家。
ゆっくりとした歩調で、潤一は手前の道路を進み、
そこに近づいていった。
あたしも、その後ろをついていく。
すると、その家から、
小学校の低学年くらいの男の子が2人出てきたのが見えた。
きゃっきゃっ、と楽しそうにじゃれあっている。
周りの家にその声が反射して、
セミの声の中に、明るい声たちが混ざった。