金星

その後ろから、同じく40代くらいの髭が生えた男性が、

家から出てきた。


セミの声が鳴り響いている中、

先に子どもたちが家の前にとまっているミニバンに向かっていく。


買い物にでも向かうのだろうか、

普通の幸せな家族、という感じだった。


あたしたちとの距離は、5メートルくらい。


「潤一、あれがお母さん? 声かけなくていいの?」


思わず、突っ立ってるままの潤一に向かって、あたしは言った。
< 273 / 358 >

この作品をシェア

pagetop