金星
「ん……俺が話しかけたところで、何になるんだろ?」


「何言ってるの? せっかくここまで会いに来たのに」


「……」


「潤一~」


中々動き出そうとしない潤一の背中をあたしは押した。


「いや、やっぱ帰るべ。母さんの新しい生活、邪魔しちゃいけない気がする」


「でも~」


「悪いな、ここまで付き合わせちゃって」



直射日光が潤一の髪の毛を照らす。

眩しくて見えづらかったけど、

潤一は何かを諦めたような悲しい笑顔をしていた。
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