金星


ガタン、ゴトン。


日が傾きかけている中、

電車は再び田んぼの中を進んでいく。


同じ車両にはお客さんが2、3組くらいしかいなかった。


「ねーねー、お母さんと何話したの?」


「あ? 言わねーよ」


「いーじゃーん、大好きだったお母さんとの再会だったんでしょ?」


「お前にはもう何も言わねーよ」


そう言って、潤一はぷいっとあたしと反対側の方を向いた。

ちょっと、照れてるみたい。


「……お前主婦なんじゃなかったの?」


ちらっと、潤一は横目であたしを睨む。


「えへへ~、ネットの世界と現実は違うんですー」
< 280 / 358 >

この作品をシェア

pagetop