金星
遠くに見える山に向かって太陽が隠れていく。 

次は~宇都宮~、というアナウンスが電車に響いた。


「そーだ! ねーねー、餃子食べていこうよー」


「……」


「潤一~?」


反応がなかったので、つんつん、と肩をつっついてみたら、

その反動か、あたしの肩に潤一がもたれかかってきた。


「もう……寝てんじゃん」


いじけたようにそう呟きつつも、

あたしは安心しきっているような潤一の寝顔に向けて微笑んだ。


昨日、床で寝させちゃったから、きっと寝不足だろうし。


宇都宮での乗換えがなく、直通で大宮方面まで行ける電車だったから、

そのままあたしの肩で寝させておいた。

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