金星

「潤一くん~、お疲れ~! 今日暇だったらご飯でも一緒に行かない? おごってあげるよ!」


仕事が終わると急に、その事務の女性は俺の腕をつかんできた。

びっくりして俺は目を見開いたまま、その女性を見た。


確か、入社2年目の夏美さんって言うんだったっけ。


――俺に近づいてくる女なんて、目がドルマークにしか見えねーんだよ。


いつだったか、親父がそう言っていたのを思い出した。

社長の息子に近づこうとしてるのか、俺に近づこうとしているのか。


前の俺だったらきっと誘ってきたらやることだけやっていただろう、と思ったが、

その時、携帯がポケットの中で震えた。


『もちろん無事だよ、当たり前じゃん! いろいろ心配かけてごめんね』


昼間に送ったメールの返信が今来ていた。

再び急いで俺は返信を打つ。
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