金星
『今日会える?』


『うん、今から地元帰るよ~』


『俺もあと1時間くらいで駅向かうから待ってろよ』


「ちょっと~潤一くん聞いてる?」

「すみません、今日は先約あるんで。また今度」


そう言って、俺は夏美さんの誘いを断って、

急いで隣町の駅――優奈の家の最寄り駅に向かった。


もう夕方6時前。

仕事帰りのサラリーマンの姿も目につく。


改札から出てくる人が丁度見える、

太い柱にもたれながら、その姿が見えるのを待つ。


女を待ったことなんて今までねーな、と思いながら、

俺は一体何をしているんだ? とも思った。
< 290 / 358 >

この作品をシェア

pagetop