金星

「あー何泣いてんだよ」


「わ、わかんなーいよぉ~」


改札に向かう人、出てくる人、

いろんな人が俺たちを見ているだろうが、

そんなのは全く気にならなかった。


「……ばーか。鼻水つけるなよ」


「ふぇ~ん、じゅん、いちの~ばか~」


嗚咽がひどくて何言ってるか全く分からない。


口調はいつも通りの憎まれ口だが、

華奢で小さくて、脆いものに思えた。
< 293 / 358 >

この作品をシェア

pagetop