金星
どれくらい、そうしていたのだろうか。


腕を解き、優奈の顔を覗き込んだ。


「ひでー顔」

「うっさい、見ないでよ~!」


マスカラが半分取れかけていて、ほっぺたも鼻も赤い。


2日ぶりなのに、久しぶりの再会って気がした。

本当に、再び、会えて良かった。



ゆっくりと駅前通りを2人で歩く。

夕日が建物の奥から見える時間帯。


「初めてあたしから別れようって言った」


「ああ」


「大変だったんだよ? もちろんキレられるし、その後泣かれるし」


「そーなんだ。ってかそれ重いだろ、貸せよ」


優奈が持っていたボストンバックをひょいと取り上げた。


見た目よりもずっしり物が詰まっているようだ。

おそらく同棲のために持っていった荷物が入っているのだろう。
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