金星

何でそんなに心配してくれるの?

どうせ誰にだって優しいんでしょ?

それより、あのOLは何なの?


本当は潤一に会えるのワクワクしてたんだよ。


「そっか、それなら良かった

……ってどーした?」


泣くな、泣くな、と思っても、

ほっとしたような潤一の優しい笑顔をちらっと見た瞬間、

あふれ出してしまいそうになった。


もうすぐ始業式が始まるため、

クラスメイトたちは順に体育館に向かっている。


あたしと潤一の間にだけ、息がつまるような沈黙があった。


「そ、そろそろ始業式行かなきゃ!」


ガタン、と椅子の音を強く鳴らし、あたしは急いで席を立つ。
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