金星
教室 by jum
夏休みの間、一度だけアズミの姿を駅前で見かけた。
エクステを取ったようで、ボブくらいの髪型になっていて、
楽しそうに同世代くらいの男性と一緒に買い物をしていた。
それを見て、俺は安心していた。
それから、親父から俺の記憶と母さんのことを聞いて、
10年以上ぶりに母さんに会って抱きしめられて。
恋だの愛だの、そういうのは良く分からないけど、
これからは一緒にいて楽しかったり、守ってやりたいと思うような女ができたら、
そいつとしっかりと向き合っていきたいと思っていた。
「行くなよ……」
雨の音が漏れてくる教室の中。
このまま優奈がどこか遠くに行ってしまうような気がしたため、
俺は思わずその腕をつかんでいた。