金星
雨の音の中に、始業式のはじめを告げる、チャイムの音が鳴り響いた。
俺と優奈の間には、そんなのをものとしない沈黙があった。
優奈は俺と目を合わせようとしない。
けど俺は焦点の定まらないその目を見つめ続けた。
「……だって」
すると、普段通りのかすれた声を更に低くして、
優奈が話し出した。
「ん?」
「だってこの前、大宮で……、ってか嫌だ、こんなこと言いたくない」
ここまで言ったところで、
優奈は顔ごと俺から目を逸らしてしまった。
「いいから言えよ。このままお前に避けられ続けるの俺嫌だから」
負けずに俺は優奈の腕を優しく掴みなおし、そう伝えた。