金星
「……わかんねーな。ってかお前マジすげーよな」


ぼそっ、とそう言いながら、潤一は空になった缶を片手に立ち上がった。


軽くブルガリの香水の匂いが残る。



「だって俺、童貞だし」


「はい?」

「心の」



思わずあたしは潤一の方を見た。




「俺、人好きになったことないから」




そう言って軽く笑った潤一の表情は、

少し寂しそうに見えた。



そして、その後、数学の宿題見せてくださいと言われた。

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