金星

「だって、あんなことされたら、誰だってドキドキするっしょ?」


「あんなこと?」


「だ、抱きしめられたら、しかも人前でぎゅーっと」


「あー、そんなこともあったっけ? で? ドキドキしたんだ?」


俺はそう意地悪そうに聞いて、優奈の頭に手を置いた。


大丈夫、こいつはどっかに消えたりしない。

どこにも行かないはず。


どっかに行ったとしても、連れ戻してこれる気がする。


夏休みの終わりごろ、優奈と会えない間、

もっと優奈と向き合っていきたいと思い始めていた。


ってか、こいつなら真剣にぶつかっていっても大丈夫だと思っていた。


いつでも本気で恋にぶつかっていってるはずだから。
< 313 / 358 >

この作品をシェア

pagetop