金星
「だって、あんなことされたら、誰だってドキドキするっしょ?」
「あんなこと?」
「だ、抱きしめられたら、しかも人前でぎゅーっと」
「あー、そんなこともあったっけ? で? ドキドキしたんだ?」
俺はそう意地悪そうに聞いて、優奈の頭に手を置いた。
大丈夫、こいつはどっかに消えたりしない。
どこにも行かないはず。
どっかに行ったとしても、連れ戻してこれる気がする。
夏休みの終わりごろ、優奈と会えない間、
もっと優奈と向き合っていきたいと思い始めていた。
ってか、こいつなら真剣にぶつかっていっても大丈夫だと思っていた。
いつでも本気で恋にぶつかっていってるはずだから。