金星
「ドキドキしてんでしょ? 手から心臓の音伝わってきてた!」
「は? んなわけねーべ」
思わず、俺も笑ってごまかしてしまったが、
さっきまで自分の心臓が速く強く鳴っていたことは分かっていた。
「うそ! 口では格好つけてたけど、手ぇ震えてたよ。人にばっかり恥ずかしいこと言わせてずるい!」
俺の目をしっかりと見据えて、
低めのハスキーボイスで優奈は口を尖らせた。
その時、廊下の方からたくさんの足音と声が聞こえてきた。
始業式が終わったようだ。
「……俺はお前と一緒にいる時間、嫌いじゃねーよ」