金星
「まー、そんな口とがらせんなよ。お前笑ってた方がマシだし」
「マシって……」
ちらっと、潤一を見上げる。
すると、潤一は優しく微笑みながら、あたしを見つめていた。
ゆっくりと、大きく心臓の音が鳴る。
いつも通り、あたしのことバカにするんだけど、
最近の潤一は、口で言ってることと、漏れてくる感情が違う気がする。
改札に入る人、改札から出る人がひっきりなしに行き交う駅の中、
あたしたちはちょうど、大きなポスターが貼られている、太い柱の影にいた。
「うーん、何かお前には、上手く言えねーんだよなぁ」
そう言って、潤一は困ったような顔で
自分の髪の毛をいじっていた。