金星
少し遠出して来た渋谷の町は若者たちで賑わっていた。

離れ離れになってしまわないように

あたしはヨシヤのすぐ左を歩いていた。


何人もの肩とぶつかるたびに、見失ってしまいそうになる。


すると、


「迷子にならないよーにねっ」


そう言って、ヨシヤはその固い左手であたしの右手の指を包み込んだ。


「……うん」



ヨシヤはただの友達……。



信号が青になる。

人の流れが横断歩道を埋め尽くしていく。

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