金星
俺は左手で携帯をいじっていたが、
そのアナウンスがなった時、右手に温かい体温の感覚があることに気がついた。
ちらっと横を見ると、隣に座っている優奈の左手が俺の右手に触れている。
そこから優奈の熱が伝わってくる。
顔は切なげな表情。
家に帰りたくない子どもみたいな感じ。
俺はその小さな手を自分の手で包み込んだ。
「もう遅いし、家まで送ってやるよ」
「え? いいよ~潤一遠回りになるじゃん」
「じゃ、やめとこっかなぁ~」
「……」
俺が意地悪っぽくそう言うと、
優奈は駄々をこねるように俺の手をぎゅっと2回握りなおした。