金星

俺は左手で携帯をいじっていたが、

そのアナウンスがなった時、右手に温かい体温の感覚があることに気がついた。


ちらっと横を見ると、隣に座っている優奈の左手が俺の右手に触れている。

そこから優奈の熱が伝わってくる。


顔は切なげな表情。

家に帰りたくない子どもみたいな感じ。


俺はその小さな手を自分の手で包み込んだ。


「もう遅いし、家まで送ってやるよ」


「え? いいよ~潤一遠回りになるじゃん」


「じゃ、やめとこっかなぁ~」


「……」


俺が意地悪っぽくそう言うと、

優奈は駄々をこねるように俺の手をぎゅっと2回握りなおした。
< 335 / 358 >

この作品をシェア

pagetop