金星
「別にいいよ。俺も楽しかったし」
「……」
気がつくと、さっきみたいな切なげな表情になっている。
星が出ている快晴の夜空。
商店街通りを通る車の音が時々聞こえてくる。
「ばーか、だから、そんな顔するなよ。またどっか行く時は付き合ってやるから」
そう言って、俺は優奈の頭に手を置いた。
「うん、ありがと」
優奈は一生懸命に微笑みながら、俺を見つめた。
本当はまだ帰りたくない、って気持ちが痛いほど伝わってくる。
じゃーまたな、と言って、そこから離れようとしたが、体が動かない。