金星

「そんな顔されたら俺だって帰れねーよ」


「だって、まだ一緒にいたい……」


あたりはしーんとしているためか、

消えそうなかすれた声で呟かれたその言葉が、はっきりと聞こえた。


「ああ、言わなくても分かるよ」


優しく優奈の頭を撫でながら、落ち着いた口調でそう言ったが。


「分かるよ……じゃなくって! ちょっと、そろそろはっきりさせてよ!」


と、突然、優奈がキレ始まる。


「はい?」


「あたしはどこにも行かないよ。絶対潤一の前から消えたりしないよ?」


優奈はいつの間にか突き刺すような目で俺を見つめていた。


普段通りに、おちょくってみたい衝動に駆られながらも、

その目を見ると、ああ、もう逃げちゃいけないなと思った。
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