金星

それから、優奈の額に自分の額をこつっと乗せる。


「……」


心地よい沈黙が訪れたためか、

微かに電車や車の音が遠くから聞こえてきた。


すると、


「……もう一回」


ちらっと上目遣いをして、優奈がそうねだった。


「あ? しょーがねーな」


と言ってから、

さっきよりも、少しだけ長いキスをする。


それから再び言葉は発しないが、

まだ物足りないような目をして優奈が俺を見た。
< 341 / 358 >

この作品をシェア

pagetop