金星

面倒くさいので、居間から出たが、

ちゃんと話し声が聞こえるように扉を開けたまま、

バスルームの手前にある、洗面台の方へ向かった。



鏡に自分の姿を映しながら、

潤一にキスされた唇に指で触れた。



『俺、お前のこと本当に好きになって大丈夫?』


目の前で囁かれた言葉。

あの時、潤一のことをぎゅーっと抱きしめたくなった。

潤一はきっと、本当は人を好きになりたかったんじゃないかな。


など、そんなことを思っていると、


「私たちのこと、優奈から何か聞いてる?」

「はい、少し。仲の良い両親って聞いてます」


と、居間から話し声が聞こえてきた。

ママも話に加わったようだ。
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