金星
「ばーか、冗談だよ」
「ふぇ?」
まだ意味が分かっていないようで、頭の上にはてなマークが乗っているような優奈。
「いや、本気かもしれないけど……」
聞こえないようにそう呟いたつもりだったが、
「な、何言ってるの!? このエロ男ー!」
と、ようやく優奈に意味が通じたようで、すねに蹴りを一発入れられた。
「いてーよ、ばーか。じゃまたな」
最後にもう一回、長めのキスをした後、優奈と別れた。
「明日遊びに行っていいーー?」
「ああ」
「あと、大好きだよーーー!」
「はいはい、分かってるよ」
しーんとした住宅街の中、近所迷惑だろ、と思いながらも、
右手を上げて、優奈にありがとう、と心の中で呟いた。