金星

「おお、戻ったか」


珍しく、家に帰ると親父がいた。


「あー今日は一人?」


「まだ仕事中だからな。近くまで来たからちょっと寄っただけだよ」


といいながらも、カウンターで立ちながらシェリー酒を飲んでいる。


「俺、彼女できたわ」


俺も台所に行き、冷蔵庫を開けながら、親父に報告した。


「おお、そうかそうか。初彼女か?」


「そーだよ。ま、俺はお前の二の舞にはならないから」


「お? 潤一も言うようになったな」


「お前もいつまでも母さん引きずってるんじゃねーよ」


そう言って、母さんの名前がついている、そのお酒を親父から取り上げて、

グラスに入っていた残りを俺は飲み干した。

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